FM三重『ウィークエンドカフェ』2021年3月20日放送

今回は伊賀市にある『三重大学・国際忍者研究センター』、准教授の高尾善希先生がお客様。
センターでは忍者の歴史や文化を研究し、その成果を発表しています。

在した忍者と作られた忍者2種類がある

この『三重大学国際忍者研究センター』というのは、『忍者学』を研究し、地域創生に役立たせて、大学の教育にも貢献するというところです。
忍者というのは2つあって、みなさんがイメージする『作られた忍者』…ハットリ君だとか、ニンジャ・タートルズとか。
それに対して『史実の忍者』があります。
それは古文書などに出てくる、歴史的に存在した忍者。
本物の忍者ですね。
その両方を研究するのを『忍者学』と言います。
よく、黒いホッカムリをして顔を隠して、上は袂のない袖の和服を来て、下は軽衫(かるさん)という、裾がすぼんだ袴を履いて、いつでも黒い格好をして飛んだり跳ねたりする…漫画に出てくるような装束をして、いろいろ活動する忍者というのは、フィクションです。
実在の忍者を描いたものとして、ああいう格好をした忍者はいません。
江戸時代後期から、物語の挿絵としてああいう忍者が出てくるようになりました。
それがだんだんと大げさに描かれるようになって、不思議な術を使うという要素も加わりながら、海外にイメージが発展していって、外国の映画や漫画や歌に描かれるようになったということです。

 

びと呼ばれる足軽が忍者だった。伊賀・甲賀以外にも忍者は全国にいた

私は史実の忍者を研究しています。
忍者は当時『忍び』と呼ばれていて、忍び仕事を専門にする足軽のことでした。
主に何をするかというと、情報探索。
それから戦争をするとき、軍事行進するときの道案内とか、あるいは奇襲…敵の不意をついて攻撃して、戦況を打開するということ。
それからガードマン。
攻める専門家は守る専門家でもあるので、城や屋敷を守るということ。
この4つを『忍び仕事』といいますが、難しい仕事なので、やっぱり専門の人がやらないとなかなか上手くいかないということで、そういう専門の足軽が全国にいたんです。
ですから忍者というのは伊賀や甲賀だけでなく全国にいました。
だけどその中でやはり一番有名なのが伊賀や甲賀のもので、それぞれ『伊賀者』『甲賀者』と呼ばれていました。

 

またま出会った古文書に忍者のことが記されていた

私はもともと東京の、村の研究をしていました。
江戸の近郊農村の研究をしていて、それで博士論文を書いているんです。
その後、東京都に勤めて、江戸の産業に関わる資料を編纂して、江戸の町や江戸城の中に関する古文書の研究をしていました。
徳川幕府に仕える下級の武士や役人の研究をしている中で、偶然伊賀者の古文書を見つけたんです。
その中でたまたま忍者の研究をするようになり、角川書店から『忍者の末裔』という本を出版しました。
それには『江戸城に勤めた伊賀者たち』というサブタイトルが付いていまして、江戸城に勤める下級役人の研究ということで、伊賀者をたまたま取り上げたんです。
たまたま資料を見つけたから。
それが忍者研究のきっっかけですね。
昔から、忍者ハットリくんとか科学忍者隊ガッチャマンとかに憧れていたとかではないんです。
その頃は忍者ブームではなかったので。
たまたまその本を書いたとき、これもたまたま今の職場の開設と時期が重なったんです。
2017年の7月。
本を書いたのが2017年の頭で、教員公募のときとたまたま時期が重なったので、それで忍者センターにお世話になり、研究活動や地域おこし、教育などを大学と大学院で講義を持っています。

 

外性を人々に伝えていくことが、今やるべきこと

ここは伊賀市上野丸之内500の『ハイトピア伊賀』の2階にあるのですが、表に『国際忍者研究センター』と大きな看板があります。
それを通りゆく人が驚いて見るわけですよ。
しかも三重大学って国立大学ですよね。
そんなふざけたこと研究しているのかとか、こんなことが研究になるのかとか、普通は思いますよ。
でも研究ってね、意外なところで研究するのが面白いことだと思うんですよ。
こんなこと研究でききるの?
いやしかし研究できるんです、という人の意外性を突くようなのは研究していて楽しんですよ、やっぱり。
人に喜んでもらい、意外性をもって接してもらうというのが忍者研究の魅力のひとつなんじゃないかなと思います。
伊賀甲賀地域で、特にここは伊賀市ですから、伊賀の貴重な文化遺産なんですよ。
そういうことを研究することによって、地域創生に役立てるのはとても魅力的です。
文献の研究って、なんていうか、役に立たないとされることが多いんですよね。
古文書を読んでいるだけで、何も生み出さないわけじゃないですか。
だけど、伊賀市で忍者の研究をするとなると、伊賀の人にも誇りに思ってもらえるし、地域の自意識を変えていける研究ができるのは魅力的ですね。

伊賀に住んでいる人たちが、全国の人からどういうふうに見られていたのか、思われていたのか、わからないと思うんですよ。
そういう部分を調査していくと、また新たに伊賀地域の価値が出てくると思います。